日本の妖怪 VS 中南米のモンスター
ラテンアメリカでも映画の”ホラー”と言えば日本製が有名です。
怪談話には事欠かない日本。
これも長い歴史の中で我々独自の思想・習慣・文化が混じった、
世界でも珍しい怪異の大変豊富な国だと言えます。
妖怪、物の怪、怪物、怨霊、幽霊、お化け、妖魔、亡霊、魔物、
亡者、生霊、悪霊、化け物、魍魎、死霊、霊、妖異、幽鬼、鬼、悪魔、
とまあ、よくこれほど分別されているのかと改めて日本語の多様さに驚きます。
上記の日本語それぞれをスペインに翻訳してみます。
1) Fantasma (幽霊というニュアンス)
2) Monstruo (怪物というニュアンス)
3) Demonio (悪魔というニュアンス)
大分すっきりしました。
日本人にとって妖怪と物の怪の持つimageは何となく異なりますし、
亡霊とお化けのニュアンスも一緒とは言えません。
語彙に豊富なスペイン語であってもこれら表現できない日本語の多様さ。
ここに日本語と日本人の持つ感性の鋭さが表われているように感じます。
それにしても物の怪までにも”お”化けのように敬称を忘れない日本人。
この点にも我々の心優しさが滲み出ていませんか?
例えばスペイン語でSr. (敬称) fantasma(幽霊)というのは聞いた事がありません。
彼らの言語は日本人・語の持つ”曖昧”さを嫌うからだとも言えます。
日本に怪談はどれほどあるのでしょうか。
我々も把握しきれていません。
中南米はどうか?
有名なllorona(泣き女)という怪談があります。
しかしその次が続きません。
友人・知人に尋ねると、ほとんどがこのlloronaか、
西洋の魔女や悪魔の話となり、日本のような”むかーし、むか~し”、
という下りの伝承は極めて僅か。
日本の百物語はおろか、蝋燭数本で怪談が終わってしまうのです。
そして冒頭の和性ホラーが何故世界の中でも恐ろしいか。
日本の長い歴史とこうした豊富な日本語からも説明が出来るのです。